平成30年改正相続法について  

制作日 2019/6/23

民法の相続について規定した部分を「相続法」と言います。
相続法は、昭和55年(1980年)に改正されて以降、大きな改正は行われていませんでしたが、高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、約40年ぶりに大きな見直しが行われました。

H30改正スケジュール


平成30年改正相続法

今回の相続法の改正の主な内容は次のとおりです。

 

1.配偶者の居住権を保護するための方策について

(1) 配偶者短期居住権

ア 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合の規律

配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始のから6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償 でその建物を使用するこ?とができる 。

イ  遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合な どア以外の場合

配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得し た者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。

「人は皆1037 夫亡くして泣く妻を  追い出しはせん 待っとれナ1037。」

【帰属決まって六月の間か相続開始後六か月 いずれか遅いその日まで 民法1037条】

(2) 配偶者居住権

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用 又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し,遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者 居住権を取得させることができることとするほか,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させる ことができることにする。

先立たれ、独り住まうも、終身の無償の住まいを約されて、心やすらか 永久とわにハッピー1028

01

イラスト出所 政府広報センター


2.遺産分割に関する見直し等

(1) 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不 動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し, 遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受 益として扱わずに計算をすることができる。)。

(2) 遺産分割前の払戻し制度の創設等

ア 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策
各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の 金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額(150万円)を限度とする。)までについては,他の共同相続 人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。

【計算式】
単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)  限度150万円


イ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の 危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあっ た場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯 金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属 する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。

 

(3) 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

ア 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人全員の同意により,当該処分さ れた財産を遺産分割の対象に含めることができる。

イ 共同相続人の一人又は数人が遺産の分割前に遺産に属する財産の処分をした場合には,当該処分をした共 同相続人については,アの同意を得ることを要しない。

3遺言制度に関する見直し.

(1) 自筆証書遺言の方式緩和 2019/1/13施行

全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要する。

(2) 遺言執行者の権限の明確化等

ア 遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行 為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化する。

イ  特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財 産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等を,明確化する。

執行者は、「遺言の内容を実現する」任務を負い、執行者であることを示してした行為の効力が直接に相続人に及ぶとし、また、遺言執行者には「対抗要件を備えるために必要な行為をする」権限が付与された。遺言執行者の指定がある場合は、執行者のみが遺贈を履行できることとされた。遺言執行者がする執行を妨害する行為は、無効との判例が明文化された。但し、善意の第三者に対抗できない。

4遺留分制度に関する見直し

(1) 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関 する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。

  遺留分を金銭で請求できる。

(2) 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。

5.相続の効力等に関する見直し

 特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする。

6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

相続人以外の親族に限り、「無償で療養看護その他の労務を提供したことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」者は、その寄与に応じ、特別寄与料(金銭請求権)を請求することができる。当事者間での協議が不調ならば家裁で審判する。卒時遺産から遺贈の額を控除した残額を超えることはできない。特別寄与料は、相続人各自がその相続分に応じて負担する。請求は、被相続人が亡くなったことと、その相続人を知った時から六か月が経過するか、又は、亡くなって一年が経過すると請求権が消滅する。


7.自筆遺言証書の法務局保管制度新設 2020/7/10施行

自筆遺言証書は遺言者自身による申請で法務局での保管が可能となる。亡くなった後に相続人、受遺者或いは遺言執行者から、その保管証明書の交付請求、その閲覧請求、遺言書の画像情報証明書の交付請求をすることができる。また、法務局保管にかかる遺言書は家裁の検認不要とされる。

*保管制度は2020年7月1日施行となります。それまでは法務局に遺言書を提出しても費用等決まっておらず保管してもらえません。

  以上   


                  

週間現代のスクープ記事2019.8.10・17日号 本館ホームに戻る

相続は7月1日から「早いもん勝ち」に変わっていた!

週刊現代スクープ

遺言書の通りに相続されると、次男は最低限の遺産(遺留分)として全財産の4分の1の500万円しかもらいない。本来なら法定相続分として遺産の2分の1をもらえるのに遺言書により4分の1になってしまう。ところが今回の相続法の改正により長男が遺言書を持って法務局に行って「実家の権利の100%を自分のものにする」という登記をする前であれば、次男は法定相続分の2分の1について母から自分に名義変更することができてしまう。

その後、次男は不動産業者に自分の名前で登記された1000万円分の家の権利(共有持ち分)を売却すればよい。共有持ち分は市場価格の7割程度なので、次男は約700万円を得られる。先述した通り遺留分は500万円なので早いもん勝ちで続きをすることで200万円も得できることになる・。

ただし、「遺言書を無視して勝手に実家の権利を売れば他の相続人から民事訴訟を起こされる可能性が高い」ともいえます。

円満相続

出所 法務省HP、政府広報オンラインページ、小池洋吉弁護士の「家族法入門条句集


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